スーパーファミコン版ドラゴンクエストI・IIは、ファミリーコンピュータ版のドラゴンクエストIおよびIIをリメイクした作品で、1993年12月18日に発売されました。この作品は、ドラゴンクエストシリーズの発売においてもはや定番行事ともいえる「発売延期」が行われることなく、発売予定どおりに発売されました(まあ、現在までにリメイク版が発売延期になった例はないのですが)。それと関係あるのかわかりませんが、この作品にはバグや不可解な仕様が目立ちます。それも、テスト作業をきちんと行えば容易に発見できるような不具合です。
この文書では、スーパーファミコン版ドラゴンクエストI・IIに存在するバグや不可解な仕様について述べます。
なお、1999年9月23日にはゲームボーイ版ドラゴンクエストI・IIが発売されました。これはスーパーファミコン版ドラゴンクエストI・IIを移植した作品で、ゲーム自体の本質的な変更はほとんどありません。そこで、スーパーファミコン版でのバグ・不具合がゲームボーイ版でどうなったかについても追記しました。
ファミリーコンピュータ版のトヘロス・聖水の効果は128歩移動する間持続します。これはスーパーファミコン版でも同じです。しかし、ファミリーコンピュータ版では1歩の移動でキャラクタ1個分移動するのに対し、スーパーファミコン版では1歩の移動でキャラクタ半個分しか移動しません。ですから、スーパーファミコン版でのトヘロス・聖水の効果はファミリーコンピュータ版の半分の距離しか持続しないということになります。
ゲームボーイ版では効果は64歩移動する間持続します。スーパーファミコン版では1歩の移動でキャラクタ半個分しか移動しないのに対し、ゲームボーイ版では1歩の移動でキャラクタ1個分移動します。よって、ゲームボーイ版でのトヘロス・聖水の効果はスーパーファミコン版と実質的には同じです。
聖水の買値が12ゴールドなのに対し、売値が19ゴールドです。公式ガイドブックにもそう書いてありましたが、これはバグではなくて仕様なのでしょうか? そのため、聖水を購入して売却することで7ゴールドの利益を得ることができます。何度も繰り返していれば無限にお金を稼ぐことができます。まあ、すなおに戦闘でお金を稼いだ方が楽なのですが。低レベル攻略をするときには役に立ちそうですね。
ちなみに、ファミリーコンピュータ版では聖水の値段は38ゴールドでした。Iでは道具を売却するときの値段は買値の半額なので、売値はファミリーコンピュータ版とスーパーファミコン版で同じということになります。なんとなく不具合の原因がわかりますね。:-)
ゲームボーイ版でもスーパーファミコン版と同じく聖水の売値は19ゴールドでした。買値も12ゴールドのままです。ゲームボーイ版で修正されなかったということは、これは正式な仕様だったのでしょうか……。
聖水と同様に、魔法の鍵も買値より売値の方が高くなる場合があります。魔法の鍵は買値が24・16・32ゴールドなのに対し、売値は一律26ゴールドです。これもファミリーコンピュータ版での売価は26ゴールドで、スーパーファミコン版と売価が同じです。
これもゲームボーイ版でもスーパーファミコン版と同じです。
スーパーファミコン版では戦闘中に聖水を使ってダメージを与えられるようになりました。このとき、以下のようなメッセージが表示されます。
エニクスは スライムに せいすいを あびせた!
このあと、与えたダメージを示すメッセージ(スライムに 15ポイントのダメージ!!
)が表示されるのですが、これがウィンドウの2行目に表示されます。その結果、ウィンドウの表示が以下のようになってしまいます。
エニクスは スライムに スライムに 15ポイントのダメージ!!
スーパーファミコン版のIIでは、冒険の書を選択するときに十字ボタンの左とRボタンを押しながらスタートボタンを押すと、サマルトリアの王子の名前を変更することができます。同様に、十字ボタンの右とLボタンを押しながらスタートボタンを押すと、ムーンブルクの王女の名前を変更することができます。
実はIでも同様の操作で名前入力画面が現れます。おそらく、IとIIとで冒険の書選択時の処理を共通で使っているために、このような現象が起こるのでしょう。しかし、Iの場合は名前入力を行っても意味がないので、この機能を無効化しておいてほしかったところです。とはいえ、この「名前変更コマンド」は取扱説明書にも載っていない「仕様外」の機能なので、まあ仕方ないのですが……。
ゲームボーイ版のIIでも、サマルトリアの王子とムーンブルクの王女の名前を変更することができます。十字ボタンの左(右)・セレクトボタン・スタートボタンを押しながらAボタンを押すと、サマルトリアの王子(ムーンブルクの王女)の名前を変更することができます。スーパーファミコン版と違い、Iで同様の操作をしても普通に冒険がスタートするだけです。
ラーの鏡は、犬になっているムーンブルクの王女を人間に戻すためのアイテムです。このアイテムは、ムーンブルクの王女を人間に戻すときになくなります。通常のプレイでは、ムーンペタの町にいる犬(ムーンブルクの王女)に対して使うことになります。
しかし、ラーの鏡を(ローレシア城にいる)別の犬に使ったときにも、王女を人間に戻すときと同じメッセージ(なんと 鏡は 美しい王女の姿を うつしだしたっ!
・鏡が くだけちり 姫にかけられた 呪いが とける!
)が表示されて、ラーの鏡がなくなってしまいます。当然、その犬は王女になるわけではありません。
なお、通常ラーの鏡を使うときは、犬の方向を向いて隣接した状態で使わないと効果がありませんが、ローレシア城の犬にラーの鏡を使うときは、犬が画面内にいればどの位置で使ってもこの現象が起こるようです。
この現象が起こると再びラーの鏡を入手することができなくなり、ムーンブルクの王女を仲間にすることができなくなるため、シナリオを進めることができなくなってしまいます。非常に致命的なバグだといえるでしょう。
ゲームボーイ版ではさすがにこのような致命的なバグはないようです。
さらにラーの鏡に関する怪現象があります。まず、城・町・塔などで「あと半歩進むと外に出る」位置まで進みます。このとき、キャラクタを「外」の方向に向かせておきます。この状態でラーの鏡を使うと、なぜか外に出てしまいます。明らかにバグなのでしょうが、なぜこのような挙動をするのか不明です。私にはこのバグの原因がまったくわかりません。
ベラヌールの町には教会の奥に旅の扉があり、その旅の扉の前には牢屋の鍵の扉があります。ロンダルキアにいくためにはここの旅の扉を使う必要がありますが、ロンダルキアから下界に戻るときもここを通らなくてはなりません。そのため、預かり所で牢屋の鍵を預けてルーラでロンダルキアに戻ったり、ロンダルキアにいるときに牢屋の鍵を捨ててしまったりすると致命的な状況に陥ってしまいます。
この状態でベラヌールに戻ろうとしても、牢屋の鍵の扉を開けることができないので町の中に入れません。クリアするにしても、ハーゴンの神殿に行っても牢屋の鍵の扉を開けられないので先に進めません。こうなると、ムーンブルクの王女がアバカムを覚えるまではクリアが不可能になります。
ゲームボーイ版では一度ロンダルキアのほこらまで行くと、ベラヌールの教会の奥にある牢屋の鍵の扉は常に開いたままになるので、このようなはまりはありません。
スーパーファミコン版には「サマルトリアの王子がハーゴンに呪いをかけられて、一時的にパーティから離脱する」というイベントがあります。このイベントを利用して、世界樹の葉を複数枚入手することができます。
サマルトリアの王子がパーティから離脱しているときは、寝込んでいる王子に隣接すると道具の受け渡しができます。ここで世界樹の葉をサマルトリアの王子に渡しておくと、再度世界樹の葉を取ることができます。この方法で最大11枚まで入手できます。
おそらく、世界樹の葉を取れる条件が「預かり所や(現時点の)パーティの持ち物の中に世界樹の葉がないこと」となっているのでしょう。
ゲームボーイ版では寝込んでいるサマルトリアの王子に世界樹の葉を渡しておいても、2枚目を入手することはできません。
シドーを倒した後に復活の玉を使うと通常とは違うメッセージが表示されますが、そのメッセージの内容が変です。例えば、サマルトリアの王子の名前が「カイン」で、ムーンブルクの王女の名前が「ナナ」であるとすると、メッセージが以下のようになります。
「ナナ王子 カイン王子 そして ナナ王女 あなたがたは 本当に よく がんばりましたね。
10000以上の経験値を獲得した場合、ウィンドウにメッセージが以下のように表示されます。
10150ポイントの けいけんちを かくとく!
この1行は23文字ですが、ウィンドウに表示される文字は左から22文字分しかスクロールしません。そのため、末尾の“!”の文字だけが上にスクロールせずに残ってしまいます。
スーパーファミコン版でははぐれメタルを倒せば必ず10000以上の経験値を獲得することになるので、まともにテストプレイをしていれば簡単に見つかる不具合だと思うのですが……。
スーパーファミコン版では戦闘中に聖水を使ってアンデッド系モンスターにダメージを与えることができるようになりました。このとき、はやぶさの剣を装備したキャラクタが聖水を使うと聖水を2回振りかけて攻撃します。なお、聖水は1つしか減りません。
ゲームボーイ版ではこのような現象は起こりません。
余談ですが、ゲームボーイカラー版のドラゴンクエストIIIでも似たような現象が存在します。はやぶさの剣を装備した状態でドラゴラムを使うと、炎を2回吐いて攻撃します。
はやぶさの剣ではぐれメタルを攻撃すると、会心の一撃などの特別なことがない限り、必ず「1回はヒット・1回はミス」となります。まあ、不可解というほどの仕様でもありませんが、少し疑問を感じます。
ゲームボーイ版ではこのような現象は起こりません。「2回ともヒット」「1回だけヒット」「2回ともミス」のどの事象も起こり得ます。
満月の塔の6階か7階に行き、そのフロアの南の外壁ぎりぎりまで進んで半キャラクタ分「宙に浮いた」状態にします。その後、左に進んで塔から落ちます。すると、ドラゴンの角の南の塔1階に降りてきます。
そのまま外に出ると満月の塔の外に出ますが、最上階の7階まで行ってそこから落ちるとドラゴンの角の近くに出てきます。
道具屋で買い物をすると福引き券をもらえることがあります。この福引き券がもらえるかどうかは、ファミリーコンピュータ版ではランダムに1/8の確率で決まりますが、スーパーファミコン版・ゲームボーイ版では規則性があります。おおざっぱに言うと、買い物をした後の所持金を16で割った余りが一定値になったときに福引き券をもらえるようになっています。
話は変わって、スーパーファミコン版になって、武器屋で武器・防具を購入した際に「その場で装備」することができるようになりました。そして、一部の道具屋では武器・防具が売られていることもありますが、そこで武器・防具を購入した際も同様に「その場で装備」することができます。
しかし、道具屋で武器・防具を購入した際に福引き券をもらえる条件を満たした場合、「その場で装備」した場合はなぜか福引き券がもらえません。装備しなかった場合は、通常通り福引き券がもらえます。まあ「そういう仕様である」と言われればそれまでですが、だとしてもちょっとみっともない仕様ですね。
ゲームボーイ版では装備するかしないかに関係なく、条件を満たしていれば福引き券がもらえるようになっています。
海底の洞窟地下3階にある魔法の鎧の入った宝箱を取ると、地下4階にあるまよけの鈴の入った宝箱が「すでに開けた」状態になってしまい、取れなくなってしまいます。逆にまよけの鈴を先に取ると、今度は魔法の鎧が取れなくなってしまいます。結局、この2つの宝箱はどちらか一方しか取れないということになります。
意図的にこのような仕様にしたのかもしれませんが、それにしてはちょっと意図がつかめません。やはり、単純なミスという線が濃厚でしょう。ゲームボーイ版ではこのような現象は見られません。
ゲームボーイ版でのバリアの効果はスーパーファミコン版と同様に、青色のバリアは1歩につき7ポイントのダメージで、黄色のバリアは1歩につき15ポイントのダメージを受けます。しかし前述の通り、スーパーファミコン版では1歩の移動でキャラクタ半個分しか移動しないのに対し、ゲームボーイ版では1歩の移動でキャラクタ1個分移動します。よって、ゲームボーイ版でのバリアのダメージは、スーパーファミコン版(そしてファミリーコンピュータ版)と比較して実質的には半分になってしまいました。私にはこの仕様はやや疑問に思えます。
スーパーファミコン版の「ドラゴンクエストI・II」のカセットには著作権表示がありますが、これをよく見ると……。
©1993 エニックス・アーマープロジェクト・バードスタジオ・音楽/すぎやこういち
「すぎやこういち」はないでしょう。(^^;